「いつか、自分で仕事をしてみたい」
「でも、何を仕事にすればいいのか、アイデアが浮かばない……」
そんなふうに考えながら、ネットで「おすすめの起業アイデア」を調べたことはありませんか。
そこには、オンライン講師、カウンセラー、ネットショップ、動画編集、ハンドメイド……。
選択肢はたくさん出てくるのに、眺めれば眺めるほど「どれも自分がやりたい仕事とは違う気がする」と迷ってしまう。
そんな方へ、僕はよく以下のようなことをお伝えします。
「何屋さんになるか」を、最初に決めなくてもいいんじゃない?
起業というと、新しい職業を見つけたり、立派な事業計画をつくったりしなければいけないと思いがちです。
でも、仕事の始まりは、もっと小さくてもいいと思うんです。
誰かから何度も頼まれてきたこと。「こういうのがあればいいのに」と感じたこと。つい夢中になって工夫してしまうこと。
そうしたものを少し違う角度から見てみると、まだ肩書きも名前もない、あなたらしい商品の種が見つかるかもしれません。
今回は、起業アイデアを無理にひねり出すのではなく、「まず誰に、何を届けてみるか」から最初の仕事を考える方法をお話しします。
1. 起業アイデアを「職業名」から探すと、見えなくなるものがある
例えば、会社で長年、営業事務を担当してきた方がいたとします。
資料を整えたり、問い合わせの対応をしたり、複雑な連絡を分かりやすく伝えたり。
本人は「特別な仕事をしてきたわけじゃない」と思っているかもしれません。
でも、職場では「説明が分かりやすい」「こういう案内をまとめるのが上手だね」と、よく頼られていたとします。
その方が起業アイデアを検索しても、「営業事務で起業」という職業は、なかなか出てこないかもしれません。
でも、ある日、個人で教室を開いている知人から、こんな相談をされたらどうでしょう。
「初めての人から、学べる内容や申込方法を何度も聞かれるの。ちゃんと説明しているつもりなんだけど……」
実はここに、仕事の種があったりします。
その方が得意なのは「営業事務」という肩書きそのものではなく、相手が迷わないように、情報を整えて伝えることだとしたら。
それなら、その力は「営業事務」とは別の場所でも役立つかもしれません。
2. 「いつも頼まれていたこと」を、商品にするとしたら?
先ほどの方なら、例えばこんなサービスも考えられます。
営業事務の経験 × 小さな教室の困りごと = 「はじめてのお客様」案内づくり
教室の先生に、初めて問い合わせをした人からよく聞かれる質問を聞いてみる。
そして、体験レッスンの内容、持ち物、場所、料金、申し込みから当日までの流れを、初めての人にも分かる案内に整える。
必要なら、申し込み後に送るメール文や、問い合わせへの返信文も一緒に用意する。
これなら、お客様が購入するのは「事務作業を代行してもらう時間」だけではありません。
初めてのお客様が迷わず参加できて、先生自身も何度も同じ説明をしなくて済む状態です。
もちろん、実際にお金を払って依頼したい先生がいるかは確かめる必要があります。
でも、本人は何か新しい資格を取ったわけでも、突然すごい才能を発見したわけでもありません。
今まで当たり前にやっていたことを、別の人の困りごとに使ってみただけ
なんです。
起業アイデアは「何ができる人になるか」だけでなく、「自分がもうできることで、誰が喜ぶか」からも生まれます。
3. 好きなことの中にも「商品になりそうな困りごと」がある
もう一つ、別の例を考えてみましょう。
裁縫が好きで、休日にバッグや洋服をつくっている方がいるとします。
「裁縫が好きなら、ハンドメイド作品を売る? 教室を開く?」
もちろん、それも選択肢です。
でも、その方の周りには、「布は買ったけど、ミシンを出したところで止まっている」「子どもの入園グッズを作りかけたまま、完成できない」という人が何人もいたとしたら?
ここでも、少し見方を変えてみます。
裁縫好き × 途中で挫折した人 = 「作りかけ作品レスキュー」
最初から裁縫を一通り教える教室ではなく、家に眠っている作りかけの作品を、一緒に完成させる90分。
参加者は、作りかけの作品と、どこで困っているのかを持ってくる。
その場でできる範囲を確認し、つまずいた部分を一緒に解決しながら、完成までの道筋をつくる。
「裁縫が上手になりたい」という人だけでなく、「あのバッグを、どうしても完成させたい」という人にも届くかもしれません。
さらに、教室を開くのが好きなのか、少人数でじっくり手伝う方が好きなのかによって、サービスの形も変えられます。
大切なのは、裁縫が好きだから必ず裁縫教室を開こう、と決めつけないこと。
自分の「好き」と、誰かの「困った」が、どこで出会うのか。
そこに目を向けると、違う仕事の可能性が見えてきます。
4. 最初から「完成された事業」にしなくてもいい
ここまで読んで、「アイデアは面白いけれど、いきなり起業するのは不安」と思った方もいるかもしれません。
自分で仕事を始めるとなると、ホームページ、屋号、ロゴ、料金表、集客方法……考えることが一気に増えますよね。
でも、僕なら、まずはこんな順番をおすすめします。
最初に、大きな事業をつくるのではなく、小さくても誰かがお金を払って頼める「一つの商品」を考えてみる。
例えば、先ほどの教室向けの案内づくりなら、初めから「小規模事業者の業務改善コンサルティング会社」を立ち上げる必要はないです。
「初めてのお客様への案内を、一緒に整える」という一つのサービスから始めることもできます。
裁縫なら、毎週大人数を集める教室ではなく、まず少人数の「作りかけ作品レスキュー」を一度開催してみる。
そこで、お客様が何に困っていて、どんなところに喜んでくれるのかを知る。
そして、自分は実際にその仕事をしてみてどう感じたのかも確かめる。
思っていたより楽しかったのか。準備に時間がかかりすぎたのか。もっと違う形で届けたくなったのか。
アイデアを考えるだけでは分からなかったことが、小さな実践から見えてきます。
5. アイデアがいくつも浮かんだら、どれを選べばいい?
いろいろ考えているうちに、今度は「どれも面白そうで、一つに決められない!」となることもあります。
そんなとき、僕が大切にしたいのは、アイデアの斬新さだけで選ばないことです。
まずは、次の4つを比べてみてください。
- 誰が欲しい? そのサービスを必要としていそうな人を、具体的に思い浮かべられるか
- 届けられる? 今の経験や技術で、責任を持って提供できる範囲はどこか
- 続けたい? 実際にその仕事をする時間を、自分も楽しめそうか
- 暮らしに合う? 準備時間、移動、費用、収入の見通しが、望む働き方に合っているか
とくに最後の「暮らしに合う?」は、僕は忘れたくないところです。
自分らしく働きたくて仕事を始めたのに、いつの間にか、仕事のために大切なものを全部後回しにする毎日になっていたら……。
それは、本当に望んでいた起業でしょうか。
とはいえ、最初から理想の条件をすべて満たす必要もありません。
最初に試す商品と、これから育てていきたい仕事は、同じでなくてもいいんです。
まずは無理なく試せる一つを選び、実際のお客様との出会いから育てていく方法もあります。
今日できること|「最初の商品」の種を一つだけ選んでみる
起業アイデアが浮かばないときは、紙に次の3つを書いてみてください。
①「よく頼まれること」を3つ書く
仕事でも、家族や友人との関係でも構いません。
「説明してほしい」「これをまとめてほしい」「一緒に考えてほしい」と頼まれたことはありませんか。
② その人は、何に困っていたのかを書く
頼まれた作業そのものではなく、その奥にあった困りごとを考えます。
例えば「お知らせを作ってほしい」と頼まれたなら、本当は「初めての人にも、迷わず参加してほしい」だったかもしれません。
③ まず一人に届けるなら、どんな商品にする?
対象となる人、提供すること、終わったときに得られるもの、時間や料金の目安を、一枚にまとめます。
そして、実際にその困りごとを持つ人に話を聞いてみる。
「面白そう」という感想だけでなく、本当に頼みたいか、何に不安を感じるか、お金を払うなら何を期待するかまで聞いてみます。
可能なら、条件を明確にしたお試し有料サービスとして試してみると、さらに具体的な反応が分かります。
もし反応が薄くても、それはあなたの合ってないという証明ではなく、提供する内容や、相手、届け方が合っていなかっただけの可能性もあります。
最初のアイデアは、考え直してもいいし、アイデアは磨いて行くもので、生まれたまんま使うものでもないです。
自分の経験や得意なことをもっと自由に見つけたい方は、「自分の強みの見つけ方」についての記事も参考にしてみてくださいね。
あなたに合う職業を探すより、あなたから生まれる仕事を考えてみよう
「起業したいけど、アイデアがない」
そう感じるとき、足りないのは情報でも、資格でも、才能でもないことがあります。
もしかしたら、すでにある職業のどれかに、自分を当てはめようとしていることが、発想を狭めているのかもしれません。
いつも頼まれてきたこと。つい工夫してしまうこと。誰かの困りごとを見て、放っておけなかったこと。
そうしたものを、別の角度から組み合わせたら、今まで名前のなかった商品やサービスになる可能性があります。
Design MEでは、その人が持っている経験や才能、個性を材料に、自分一人では思いつかなかった仕事の可能性を一緒に考え、実際に届けられる商品へと形にしていきます。
ただ、僕が大切にしたいのは、起業すること自体をゴールにしないことです。
自分が大切にしたい人生を送りながら、誰かに求められ、喜ばれる仕事をつくること。
そのための最初の一歩は、大きな起業アイデアではなく、身近な誰かの「それ、お願いできる?」から始まるのかもしれません。
あなたはこれまで、どんなことを「お願い」と頼まれてきましたか?







コーチ、カウンセラー、セラピスト、教室講師など、ひとり起業でこんなことを感じていませんか?